本日は建物滅失登記申請についてです。
電車での通勤時間や移動中のスキマ時間で回答できるボリュームです。
頭の体操にいかがでしょうか。
問1
建物を相続により取得した者が複数いる場合において、被相続人名義のままその建物を取り壊したときは、その取得者の一人は、その建物を取得した他の共同相続人の同意を証する情報を提供しなければ、当該建物の滅失登記を申請することができない。
答 ×
建物の滅失登記の申請は現状と登記記録を一致させるための報告的登記(保存行為)です。
共同相続人のうち一人から相続を証する情報を提供して申請が可能ですので、その建物を取得した他の共同相続人の同意を証する情報(承諾書)の提供は必要ありません。
問2
各階が一個の区分建物である3階建ての一棟の建物の3階部分にある区分建物が取り壊されたことにより一棟の建物が2階建てとなったとしても、取り壊された区分建物以外の区分建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人は、取り壊された区分建物以外の区分建物について、構造の変更による表題部の変更の登記を申請することを要しない。
区分建物に属する一棟の建物の一部が滅失した場合は滅失した区分建物以外の他の区分建物の構造には変更が生じないため、他の区分建物所有者は自己の専有部分についての構造変更を申請する必要はありません。
しかし一棟の建物については3階から2階に構造が変更し、床面積も変更が生じているわけなので、滅失した区分建物所有者はもちろん他の区分建物の所有者も一棟の建物の表題部の変更登記の申請義務が生じます。
なお、本問は「取り壊された区分建物以外の区分建物について」を問うものなので一棟の建物とはうたっていないことがポイントです。
実務上は滅失した区分建物の所有者が「区分建物滅失登記」と併せて「一棟の建物の表題部変更登記」を行うのが一般的です。
問3
A所有者の土地の上に借地人B名義の既登記の建物がある場合、Bの承諾を得てAが建物を取り壊したときは、Aは、Bの承諾を証する情報を提供して、当該建物の滅失の登記を申請することができる。
建物滅失登記の申請適格者が誰なのかを問う問題です。建物滅失登記は義務登記で建物の表題部所有者または所有権登記名義人が申請適格者です。(不動産登記法第57条)
基本的事項なので確実に覚えておきたいところです。
また、本問のケースは借地人が建物所有者ですので例え「承諾書」を添付の上での土地所有者からの建物滅失登記申請をしても「却下事由」に該当するので却下されます。(不動産登記法第25条)
しかし実務上では建物がとても古く現存しないことが明らかで、建物所有者との連絡がつかない場合などは土地の所有者からの建物滅失申出をおこなうことが出来ます。
あくまで申出なので登記官の職権登記を促すものです。
問4
共用部分である旨の登記がされている建物を取り壊した場合は、当該建物の所有権を証する情報を提供して、その所有者の一人から建物の滅失の登記を申請することができる。
共用部分である旨の登記がされた建物について、建物の滅失登記を申請する場合には申請情報にその申請人の所有権を証する情報を提供しなければなりません。
これは共用部分である旨の登記がなされると表題部所有者の登記または所有権その他の権利に関する一切の登記は職権により抹消されるため、登記記録上、所有者が判明出来ないためです。
問5
処分禁止の仮処分の登記がある建物を取り壊した場合、当該仮処分がされた建物の所有権の登記名義人は、建物の滅失の登記を申請するときは、処分禁止の仮処分の申立人の承諾を証する情報を提供しなければならない。
建物滅失登記において所有権の登記以外の権利に関する登記がなされている場合であっても、当該権利に関する承諾書等の提供は必要ありません。
表示に関する登記はあくまで物理的現状を一致させることに重きをおくものです。事実上建物が滅失していればそのとおりに登記すべきなので、例え抵当権や処分禁止の仮処分の登記があろうとも当該権利の登記名義人に承諾を要するものではありません。
しかし実務上は調査報告書に抵当権者の担当者や連絡先の記載を求められたりもします。
今回は「建物滅失登記」についてでした。
建物滅失登記でよく問われるポイントを少しまとめてみたいと思います。
ポイント
① 申請適格者
申請適格者は建物の表題部所有者または所有権登記名義人が申請適格者です。(不動産登記法第57条)また、所有者が共有の場合や相続が発生している場合は共有者もしくは相続人の一人からでも申請出来ます。
② 申請期間、過料
滅失したその日から1ヶ月以内に建物滅失登記を申請しなければならない。つまり義務登記となります。また、申請義務者が申請を怠った場合は十万円以下の過料に処されます。(不動産登記法第164条)
③ 滅失の判断
社会通念上、建物として効用を果たさない状態であれば滅失可能と考えます。壁や屋根が取り壊されていて、柱や基礎が残っている場合でも滅失された状態と言えるでしょう。
④ 所有権以外の登記がある場合の承諾書
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