所有権証明情報は「建物表題登記」や「建物表題部変更登記」などではお馴染みの「添付情報」ですが、実際に実務で添付する書類はどんなものでしょうか。
試験では機械的に「所有権証明情報(証明書)」と記載すれば申請書は完成するので、
「建築確認通知書」や「工事完了引渡証明書」は知っていてもこれらの主要書類を欠く場合は何を補充して所有権証明情報とするかまでは把握していない方も多いと思います。
ですが、平成21年の土地家屋調査士試験では所有権証明情報について具体的な書類を解答させる問題が出題されているので、やはり具体的な書類と添付の基準を確認するべきかと思います。
まずは所有権証明情報を添付情報とする登記の種類を確認しましょう
所有権証明情報が必要になる建物登記は大まかに下記の4パターンになります。
考え方として登記簿に反映されていない部分が生じる場合は「所有権証明情報」が必要になると覚えておくと良いでしょう。
ですので、建物の「新築」や「増築」はもちろんのことですが、附属建物の「新築」や「増築」その他にも床面積が増加する更正登記の場合も「所有権証明情報」が必要になるので、ここでまとめて確認しましょう。
所有権証明情報が必要な登記
① 建物表題登記
② 建物表題部変更登記(増築による床面積が増加した場合)
③ 建物表題部更正登記(床面積が増加した場合)
④ 合体による建物表題登記及び合体前の建物表題登記の抹消
建物の所有権証明書の添付基準
主たる証明書 | 補充する証明書 | 備考 |
1 建築基準法第6条の規定による確認通知書及び同法第7条の規定による検査済証 | ||
イ 確認通知書及び検査済証 | ||
2 1 のいづれか一方の書面のない(紛失または提出ができない、若しくは検査済証の交付がない。)場合 | ||
イ 確認通知書 | 建築主事の相当証明書 | (検査済証の紛失) |
ロ 検査済証 | 同 上 | (確認通知書の紛失) |
ハ 確認通知書 | 工事完了証明書 | (検査済証の交付がない場合) |
ニ 確認通知書 | 敷地所有者証明書 | 同 上 |
ホ 確認通知書 | 固定資産課税台帳登録事項証明書 | (検査済証の交付のない場合) |
ヘ 確認通知書 | 建築工事請負契約書及び工事代金領収書 | 同 上 |
3 1 の書面がない場合 | ||
イ 工事完了証明書 | 敷地所有者の証明書(借地の場合に限る) | |
ロ 工事完了証明書 | 固定資産税の納付証明書 | |
ハ 工事完了証明書 | 固定資産課税台帳登録事項証明書 | |
ニ 工事完了証明書 | 工事代金領収書 | |
4 1・3の書面がない場合 | ||
イ 敷地所有者の証明書 (借地の場合に限る) |
固定資産税の納付証明書 | |
ロ 敷地所有者の証明書 (借地の場合に限る) |
固定資産課税台帳登録事項証明書及びその納付受領書 | |
ハ 敷地所有者の証明書 (借地の場合に限る) |
工事代金領収書 | (当該建物の工事代金領収書と確認できるものに限る) |
5 1・3・4の書面がない場合 | ||
イ 固定資産税の納付書 | その他所有権を証するに足る書面 | (納付証明書のみの場合は、過去3年間程度の証明書) |
6 1・3・4・5の書面がない場合 | ||
イ 固定資産課税台帳登録事項証明書及びその納付受領書 | その他所有権を証するに足る書面 | |
ロ 建築工事請負契約書及び工事代金領収書 | 同 上 |
山形地方法務局での登記事務取扱要領(一部抜粋)
上記で挙げた添付基準のほかにも各地域での登記取扱要領があり、山形地方法務局でももちろんあります。
その中でも上記の表でいう「その他所有権を証するに足る書面」についてと共有建物の表題登記における持分についての承諾書は実務上よく触れる部分でもありますので、ご紹介させて頂きます。
その他所有権を証するに足る書面
敷地の賃貸契約書、火災保険加入証書、電気・ガス・水道等の設備代金領収書、建物の建築を目的とした金融機関の貸付証明情報、隣地居住者の証明情報、借家人の証明情報など
共有建物の表題登記に添付する「持分承諾書」について
この書類は建物の所有権が共有で持分が均等ではないときに添付する書類になりますが、この場合は持分が少ない方の承諾書を提出します。(実印付となるので印鑑証明書も添付)
最後に
建物登記における「所有権証明情報」は原則「確認通知書」と「検査済証」の2点セットを提出することになり、そのいずれかを欠く場合は「工事完了引渡証明書」などで補充することで証明情報として十分なものにしていくという事でした。
実務上、「確認済証」と「検査済証」で十分な地域もあれば、更に「工事完了引渡証明書」を求める地域もあります。
東京都内のように所有権証明情報について3点主義をとっている場合もあるようですので、登記申請の際には皆様の申請する管轄法務局の取扱いを確認する必要がありますね。
土地家屋調査士試験の勉強は登記実務に直結する学習なので勉強すればする程、実務において有利ですが、
実務上把握すべき地域性や慣習は試験という点では雑音となってしまう可能性もありますのでご注意を。
最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、また。