こんにちは、ゆうぞうです。
今回は筆界未定地についてのお話です。
筆界未定地とは下図のように地図に記載される土地の地番が何かしらの原因でプラス地番として処理されてしまった土地のことです。
このような土地は不動産取引はもちろんのこと、様々なシーンで悩みの種となります。
今回は、「筆界未定地」について原則と例外を確認し少し掘り下げていきたいと思います。
Contents
筆界未定地
筆界未定地とは
筆界未定地の定義を確認してみます。
筆界未定地とは,国土調査法による地籍調査において,一筆地調査を行った際,土地所有者の同意が得られなかったとき,又は筆界に争いがある等の理由によって隣接する土地相互間の筆界が確認できなかった場合に,当該部分の筆界を「筆界未定地」として処理したものをいう。また,そのほかに,地籍調査の時点で合併があったものとして処理したが,登記所で登記の処理をするときになってその中の一部の土地について,所有権が移転しているときや,抵当権の設定登記がなされたため,合筆の登記ができないことから,筆界未定として処理する場合がある。
(引用:Q&A表示に関する登記の実務第1巻)
国土調査における地積調査では筆界確認調査をおこなうことになっており、その処理方法も規定で決まっています。
その処理方法の1つとして筆界未定がありますが、これも地籍調査作業規定準則第30条で定められています。
筆界の調査
第30条 筆界は、慣習、筆界に関する文書等を参考とし、かつ、土地の所有者その他の利害関係人又はこれらの者の代理人の確認を得て調査するものとする。
2 前項の確認が得られないときは、調査図素図の当該部分に「筆界未定」と朱書するものとする。
つまり、筆界未定地とは地積調査がおこなわれた際に筆界を確認出来なかった故、筆界未定として処理された土地のことです。
地積調査の事業としてせっかく測量してもらえるのに、筆界未定で処理されるなんて勿体無い。とも思うのですが、やはり不動産(財産)に係わることなのでどうしても納得いかない方もいれば、事業の期間内に境界確認がおこなえない方だっていらしゃるかもしれません。
そうなると筆界未定の処理になってしまうんですね。
画像元:http://www.takacho.jp/life_stage/chiseki-chosa/contents/9hikkai-mitei.html
筆界未定地による問題点
筆界未定地による問題点は様々ですが、大まかに下記のことが挙げられます。
- 分筆登記が(原則)出来ない
- 地積更正登記が出来ない
- 地目変更登記が(原則)出来ない
- 土地の売買が困難
- 測量が必要になった場合は自己負担。筆界未定を解消するとなると多額の費用が必要
- 抵当権を設定が困難
- 銀行の融資が受けられない可能性がある
- 農地の場合、農地転用が受けられない可能性がある
筆界未定処理をされた当初は大きな問題と考えていなくても、将来その土地の売買や相続、銀行の融資を受けるようなシーンになると問題が露呈します。
例えば、
将来土地を売って移住したくても境界不明の土地は中々買い手がつかず手放せないし、土地を担保に融資を受けようにも中々融資もおりない。
いっその事、地図を直そうとしても測量費用や登記費用が通常よりもはるかに嵩んでしまい手も付けられない事態に陥るケースもあります。
更に言えば、お金だけの話で済めばまだ良い方なのかもしれません。
と言うのも
筆界未定を解消するにはそれに係る土地所有者の協力が不可欠だからです。
仮に筆界未定の原因が境界争いや近隣との不仲であれば、協力が得られず解消すること自体ほぼ不可能になってしまうことも考えられます。
近隣との人付き合いが良好ではない時、見た目と裏腹に生活しづらい環境に変貌することもあります。
隣に気を遣った生活を強いられ、中には嫌がらせを受けることもあるかもしれません。
こうなっては例え生まれ育った家でも嫌になるものです。
筆界未定の一部にはこういった紛争やその火種が孕んでおり、実務上はとても慎重に扱うべき案件となる可能性があります。
過去に取り扱った事件について
過去に筆界未定の地図訂正申出、地積更正登記を扱ったことがあります。宜しければ、ご参考までに。
筆界未定になった原因は国土調査で明示された境界に納得いかないAさん(亡 ひいおじいちゃん)が、後日の再立会いや書類の承諾等も全てボイコットした事によるもの。
その為、何も異議がなかった隣地まで筆界未定となってしまった案件でした。
私の立場はAさんの孫にあたる方からの依頼でした。
筆界未定の地図訂正は境界確定が必要なので、隣地の所有者に挨拶と立会い依頼をするのですが、この時は一方的に追い返されました。
やはりこの状況になった理由を先代から語り継がれているのでした。
依頼者に事情を確認すると隣地との昔から不仲なのだそう。過去の揉め事は当事者の代を越えて、影響を及ぼすことを痛感させられました。
こういった遺恨は根深く、語り継がれた者は同様の感情を抱くこともあり、その場合過去の問題を掘り返す様な事があれば、一方的に攻撃を受けることもあると言うわけです。勿論そうではない方もいらっしゃいますが。
世代が変わったからといって、過去を水に流して仲良くしましょう。とは中々うまくはいきません。
そうなると私達、土地家屋調査士が介入する余地が無くなり、問題解決に対してロングスパンでの対応をせざるを得なくなります。
幸いにも過去に扱った案件も長期に渡る説明や交渉により何とか丸く収まったのですが、立会いにまで漕ぎ着けるのに大変苦労しました。
筆界未定地の解消法
【原則】地図訂正による解消法
原則、筆界未定地は地図訂正の申出をおこなうことで解消されます。
更に地図訂正には境界確定測量をおこなう必要があります。つまり現地で筆界を確認出来なければ地図訂正は出来ないということです。(当然といえば当然ですが・・・)
また境界確定測量をおこなうと筆界確認書(境界承諾書)を取交しますが、それとは別に地図訂正の承諾書も地図訂正に係わる隣接土地所有者から取得する必要があり、
地図訂正の申出は登記簿の地積と実測面積が公差をこえる場合、併せて地積更正登記も必要となります。
実務上は公差内でも登記官から地積更正登記を求められることが多いです。
合筆による解消法
筆界未定地が上図のように全て同一所有者であれば、合筆登記をすることで1筆の土地にすることが出来ます。(合併制限があるので、厳密には1筆の土地にすることが出来る可能性がある)
上図の場合は合筆が可能であれば、地図訂正申出することなく分筆や地積更正登記が可能です。
筆界未定地における例外的取扱い
分筆登記の例外的取扱い
原則「筆界未定地」は筆界未定の状態を解消しないと分筆登記はできないとされています。
理由はその土地の全体の位置と範囲が現地で確認でいないことから、分筆後の各筆の測量が出来ず地積を明らかにすることができないのでこのような登記は原則認められないことからのようです。
ただし、
例外として筆界未定地の一部を市町村等の買収による分筆登記は実務上、便宜受理して差し支えないとされています。
この場合、
所有権移転登記請求権に基づき所有者に代位して登記を嘱託しますが、提供された関係者の証明書、公正証書等において、紛争部分に全く関係ないことが図示され、登記官の現地確認した上での判断が必要のようです。
つまり
筆界未定地の分筆登記は基本的には出来ないと考えたほうが良いでしょう。
これを認めてしまうと、分筆後の筆界未定部分は将来的に特定が困難な上、不動産取引上不都合になることも多いと思いますし。
建物表題登記の例外的取扱い
銀行の融資などといった事情を一先ず置けば、
筆界未定地でも建物表題登記は可能なケースがあります。
ですが土地の登記と同様、
原則「筆界未定地」に新築した建物の建物表題登記は筆界未定の状態を解消してからおこなうものとされています。
終わりに
筆界未定のままにしておくことは、後々の面倒事につながります。
一度筆界未定の処理をされてしまうと以後それを解消するには自己負担となり、費用がとても嵩んでしまいます。
自分に非がなくても関係者の協力が得られず、不本意な処理をされてしまった場合でも自己負担な訳です。
また前述したとおり、登記がおこなえなかったり、売買や融資が難しいと言った問題点が多く、相続を繰り返し所有者が分からない土地も出てくれば、実質手が加えられない土地になるケースもあります。
なので、
私が一番お伝えしたいことは
これが自分発信では無く関係土地からの申出であれば是非協力して頂きたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
それではまた。