こんにちは、ゆうぞうです。
先日ご相談にいらっしゃった方で、
同一敷地内で附属建物を「曵行移転」する予定だけど、登記しないといけないの?
という質問があったのですが、
そう言えば、このケースを問う択一問題の肢をみたことあったな。と思ったので、
「曳行移転」についてお話します。
曳行移転とは
「曳行移転」とは既存の建物を解体せず、宙に浮かせて移動させることを言います。
解体もせずそのまま宙に浮かせて移動させるってどうするの?って思いませんか?
私は実際に見たことも無ければ、「曳行移転」の登記もしたことがありません。
ですが、
今回相談があった物件は1間×1間の小屋でしたので、比較的に簡単に出来るんだろうなという印象でした。
登記原因とその日付はどう記載するの?
「登記原因とその日付」は昭和54年の通達で
「平成何年何月何日曳(えい)行移転」となっています。
よく問題で問われる「曳行移転」の論点って何だっけ?
「曳行移転」による建物所在変更登記でよく問われるものとして何点か挙げると
① 甲登記所管轄区域から乙登記所管轄区域に移動した場合
② 甲登記所管轄区域から乙登記所管轄区域に跨るように移動した場合
③ 甲登記所管轄の既存建物で附属建物だけを乙登記所管轄区域に移動させて場合
④ 甲登記所管轄の既存建物で附属建物だけを乙登記所管轄区域に移動させて場合
でしょうか。
①のケースだと、
原則乙登記所が管轄登記所として取り扱うことになりますが、申請については甲、乙どちらの登記所に申請しても良いことになっています。
②のケースだと、
甲登記所管轄の建物が乙登記所管轄に跨ったからといって、乙登記所に管轄が移るわけではありません。
つまりは、少しでも甲登記所管轄土地に建物がかかっていれば管轄は変更せず、甲登記所の管轄になるというわけです。
③のケースだと、
管轄は「主である建物」の所在位置で決まりますので、例え附属建物を乙登記所管轄の土地に移動させてからと言って、メインである「主である建物」の管轄を変更することは出来ません。
つまりは、附属建物をどこへ移動させようが建物の管轄登記所に変更は生じないということです。
④のケースだと、
③のケースとは変わり、メインの「主である建物」を乙登記所管轄の土地へ移動させるわけですので、管轄登記所に変更が生じます。
移動させる建物が「主である建物」なのか「附属建物」なのかで、結果が変わるということですね。
で、結局のところ同一敷地内の扱いはどうするの?
ここでようやく今回のご相談者の質問事項に触れますが、
結論から言うと、「建物表題部変更登記」を申請することを要しません。
というのも、
同一敷地内だと建物の「所在」欄に変更が生じるわけでもなければ、建物の「種類」「構造」床面積」にも変更が生じないからです。
変更が生じない以上は「変更登記」をする必要が無い。ということなんですね。
ただし、通達や登記研究でこのケースについて記述しており、
この場合の対処として、
「建物図面の変更の申出」
をすることが可能です。
申請では無いという点に注意ですね。
最後に
「曳行移転」について少し話しをさせていただきましたが、
今回のご相談者には
同一敷地内の「曳行移転」は登記簿上に変更が生じない為、登記申請は必要ありません。
ですが、建物図面としては実際に変更箇所があるわけなので、建物図面の変更の申出は可能ですよ。
とお話させて頂きました。
「曳行移転」は実際の業務でお目にかかれるのは稀有なことだと思いますが、試験勉強では何気によく見かける問題ですよね。
印象的な言葉なので私としては忘れにくいワードでしたが、試験勉強していてふと思い出したときに再確認しておくと更に記憶が定着しますよ。
それでは、また。
最後までお読みいただきありがとうございます。